2014年1月3日金曜日

ドローン:三題

◆ ドローン:蜜蜂(ミツバチ)の雄


ローン(drone)』という言葉は、古代英語『ドラン(dran)』とか『ドア(dore)』を源とし、ミツバチの雄(おす)のことである。16世紀に「無為な」とか「怠け者」という感覚で使われていた。ミツバチの世界では、『働き蜂(はたらきバチ)』や『女王蜂(じょうおうバチ)』など、全て雌(めす)バチが蜜の収穫生産にいそしんでいる間、雄バチは何もしていない。彼らの役割はたった一つ、女王ハチと性交し次世代の卵を産ませ、そして死んでしまうだけである。

◆ ドローン:無人戦闘攻撃機

無人戦闘攻撃(飛行)機(Unmanned Combat Air Vehicle: UCAV)のことを、一般に『ドローン』と呼んでいる。その名の通り、機上にはパイロットが不在だ。従ってコックピット、操縦機器、銃砲などの武装、脱出装置、室温や酸素調整装置などは必要がないので設置されていない。装着しているものは、『目』となるカメラ、攻撃用のミサイルだけである。結果として、有人機に比べてはるかに軽量で小型、エンジンとプロペラが一対あれば充分だ。操縦は遠隔操作でオペレーターが、スクリーンで位置を確認し、爆弾を落させる。コンピューター・ゲームをもて遊んでいるような感覚だ。利点はドローンが撃墜されたとしても攻撃側の人的損害はない。

問題は、遠隔操作であるために、オペレーターが気楽に爆弾を落し、目標の敵だけでなく無辜(むこ)の市民や子供まで殺傷してしまうことが度重なり起こった。これまでに目下戦闘中のパキスタンやアフガニスタンで何百人もの非戦闘員を殺傷してしまった。反米ムードが高まるのは無理がない。オバマ大統領も、直接の責任はないかも知れないが、事態を深刻に考慮し始めている。

ドローンの性能が正確に目標だけの攻撃に焦点が当てられるよう改良を加えるか、ドローン攻撃を全面的に撤回するか、の岐路にアメリカは立たされている。

◆ 「ドローンの出前が届いたよ、母ちゃん!」

2013年12月3日付け、New York Times 紙、モーリン・ダウド(Maureen Dowd)の記事から抜粋

モーリン・ダウド
もし、3D立体印刷機から、ピストルとかグーグルの携帯電話付きロボットが飛び出してくる時代が到来して欣喜雀躍ワクワクする人なら、小型のドローンがそこら中を飛び回っている光景を想像することができるであろう。「そうした情景は、今や科学空想小説ではなくなってきています」と、世界最大の通販企業、アマゾン(amazon.com)の会長、ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)は、CBSの番組『60ミニッツ(60 Minutes)』でチャーリー・ローズ(Charlie Rose)のインタビューに答えていた。

アマゾンの創設者であるベゾスは、小型の遠隔操作ヘリコプターがパッケージを掴んでGPS(地球上位置誘導システム:Global Positioning System)に誘導され、半径16キロ以内の家庭に、半時間以内に、2.5キロ以下のパッケーなら配達できる、と胸を張っていた。(下掲のビデオをご覧ください)同社が受ける注文の大半、86パーセントが2.5キロ以下の商品であるから、もしドローン配達F.A.A.(連邦航空管理局:Federal Aviation Administration)から許可が下りたら、更に能率が上がり人件費も軽減できるのだ。



悲観的な説もある。もし受取人が一軒家でなく、高層ビルの何階かに住んでいたら?ドローンの過密飛行で空中衝突が頻繁に起こるのでは?

ベゾスは更に、F.A.A.からの許可だけでなく、皆さんが、道を歩いている時、ドローンが頭にぶつかってこないか、といった心配をなくすような手段を確認するまで実施いたしません」とも言った。それを信ずるとしても、私の脳裏からドローンの悪印象が去らない。つまり、目下オバマ大統領の頭痛の種になっている、アフガニスタンやパキスタンで一般人を含め無差別に殺傷を繰り返している無人攻撃機ドローンのことだ。そして、我々個人の内部生活まで、空からカメラで無差別に撮影しているスパイ・ドローンのこともある。

まだ他にも不安な将来を心配しない訳にいかない。アマゾンドローン配達を実施したら、他の企業も黙ってはいまい。スターバックス(Starbucks)は特約の常連客に、毎朝きっかり7時に、特別注文のコーヒーを門前に届けるシステムを作るであろう。アップル社の会長ティム・クック(Tim Cook)は、アップル製品礼拝者たちに最新の『おもちゃ』を一刻も早く届けたがるだろうし、ディズニーのロバート・アイガー(Robert Iger)も『メリー・ポッピンス(Mary Poppins)』のようなドローンを欲しがるに違いない。

また思う。アマゾンは最近ワシントン・ポスト紙(The Washington Post)を買収した。ベゾス会長は、同紙の所有者として会長にもなり、F.A.A.ドローン規制にも発言力を得るであろう。F.A.A.は目下、商業用航空機と旅客機とが航空権を分け合うための規制を草案中で、2015年までには現行の規制が大幅に変わるものと予想される。

ベゾス会長は、私用の無人ドローン機に関するロビー政治的工作を通じ、映画界と協調し、空中撮影にドローンを利用することを推進するであろう。その筋の専門家の観測では、2020年までに3万機のドローンがアメリカの空を飛び回ると予想している。それに900億ドルが投資され、10万件の新職業が開発されるであろう、ということだ。

撮影中のドローン
ドローンは、海外ではあまり規制されていない。アイルランドの映画製作者、カロライン・キャムベル(Caroline Campbell)は、ダブリン市にあるグーグルやフェイスブックの支社のために空中撮影を受けているが、「私はドローン撮影は、グーグルの地図作成用の撮影より遥かにプライバシーを侵害してしまうように感じる」と告白している。

同じ理由で、ジャーナリスト、警察、暴露雑誌のカメラマンなどは、ドローンの利用に飛びつくことであろう。世間の耳目を避けてひっそりと人里離れた土地に住んでいる有名人のプライバシーをすっぱ抜くには、ドローンはまたとない有力な武器になるに違いない。

先週の火曜に発行されたUSA Today紙レム・リィダー(Rem Rieder)によると、アメリカの企業は、ドローンの規制をくぐり抜け、不動産業者は豪邸や高価な地所のビデオを空中から撮り、カメラマンはハワイで波乗りのシーンをサーファーの動きと同調して撮影し、カリフォルニア州ソノマのブドウ園ではブドウの成熟ぶりをドローンで記録している、と報告した後、アマゾンベゾス会長は最終的にドローン宅配の許可をとり、獲得したワシントン・ポスト紙の配達を引き受けることになるだろう。気の毒なのは、アルバイトで新聞配達をしている少年たちだ」と結んでいた。


一方警察は、ドローンによるパトロールに強い関心を示している。警官の負担を減らし、隠密行動が可能だからであろうか。

1 件のコメント:

  1. もし欲しければ、個人用の小型ドローンを購入することができます。アマゾンで、安いものでは36ドル79セントから、最高467ドルまで、選り取り見取りです。

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