2014年1月25日土曜日

マグロ、クジラ、イルカ、の受難

マグロ、クジラ、イルカ、に関する限り、日本は国際的な反逆児の役割を演じている。今回は、マグロ、クジラ論議はしばらく棚上げにし、イルカに焦点を当てる。

3年半前、2010年6月に遡って本ブログの一部から抽出。

問題は『ザ、コーヴ(『ある入り江』The Cove)』なるアカデミー賞を受けたドキュメンタリー映画が日本に輸入され、それを上映するかどうかで大騒ぎになった。その『ザ、コーヴ』を簡単に叙述すると:和歌山県太地(たいぢ)町で400年続いた伝統となっているイルカ漁の実態を克明に追う。捕獲された中からショー用のイルカを除き、あとは食用に供される。またイルカ肉をクジラ肉と偽って密売される商習慣があり、その上、肉からは2000 ppmという高値の水銀が検出されている、といった内容である。

[『ザ、コーヴ』日本向けの予告編を再上映:18分54秒]

あれ以来、イルカ漁の是非論が聞こえなくなったが、問題が忘れ去られたわけではない。2014年の昨今、イルカの殺戮と保護の狭間に立って、問題が再燃したのである。

キャロライン・ケネディ大使
再燃の起こりは、新しく日本に派遣されたキャロライン・ケネディ大使(Caroline Kennedy)が社交サイトのツイッター(Twitter)を通じて、「太地町で伝統となっているイルカ漁は非人道(inhumaneness) 性であるから、それによって日本が国際的な信頼を失うことを懸念している」という意味のメッセージを公開したことから始まる。それが1月18日(土曜)で、翌週の火曜1月21日菅義偉(すが・よしひで)官房長官が、「イルカ漁は我が国の伝統ですから、、、」と反論し、太地町のイルカ殺戮を弁護した。

時を移さず(アメリカ時間で20日)、ニューヨーク・タイムズ紙、ロサンゼルス・タイムズ紙を始め、全米大手のマスコミが、日本の非国際性、保護動物への残虐性、そしてそれを弁護した日本政府の対応を報道した。一方、日本のマスコミが、どのように報道しているかが気になって探したが、それらしい記事は全く見当たらなかった。私の見落としかも知れないと思っていたら、昨24日付けで小さな記事が発表された。

一刻を争う報道機関が、海外で報道された後、3日間も取り上げなかったのは何故であろう。それは、ケネディ大使の発言を過小評価していたからか、以前『ザ、コーヴ』の上映を巡って起きた暴力を含む反対運動を恐れ保留していた、としか考えられない。

イルカ漁を擁護する側の根拠は:
1. 日本の法律に抵触しない伝統だから。
2. 牛肉や豚肉は食用に供していながらイルカ肉を食してなぜ悪い。
といったことを盾に取っているようだ。

この反論では、イルカ保護団体を納得させることはできない。のみならず、菅官房長官「合法的かつ日本文化の伝統」としてイルカ漁を弁護した応答は、和歌山県の一漁村の入り江で『部外者立ち入り禁止』までして秘密裡に処理されている行事を、日本文化の代表的な伝統としたことは失言ではなかろうか。大方の日本人は、『ザ、コーヴの上映以前に、イルカ漁のことは全く知らなかったし、イルカ肉を食べた経験はなかったであろう。世界の人達に日本の食文化を誤解させる失言に他ならない。

私は菜食に転向し、最近牛肉や豚肉は食べていないから、この問題の圏外だが、明らかなことは、牛や豚は食用として生産されている一方、イルカは、マグロやクジラと同様、自然繁殖だから乱獲を避けて保護しなければならない。従って、牛や豚とイルカを同列に対比することは苦し紛れの開き直りである。

結論として、2010年に公開した本ブログと同様な趣旨を繰り返す。先ず、キャロライン・ケネディ大使が提起した発言の意図を理解する寛大さがあって欲しい。大使は、賛否両論に耳を傾け、討論をして正しい解答を引き出したい、という意向なのだ。

確かに我々は、些かのの罪悪感を感ずることもなく牛肉、豚肉、トリ肉、魚肉を食べている。しかしその反面、イルカを食べない理由を考えてみる必要があろう。先ずイルカは、マグロ、クジラ同様、保護なしでは絶滅の恐れがある生物であること。次に水銀の含有量が異常に高いことで人体に危険がないという保証が全くないこと。

そして最後に、イルカは、世界中の人々から愛されている知能指数の高い人なつっこい動物であることを忘れてはならない。伝統だからとか「法律に違反していないから」に固執せず、新しい時代に順応し、世界の日本人として保護派に転向するだけの柔軟性を持っても良いのではなかろうか。高橋 経

1 件のコメント:

  1. 世界中に、イルカをこよなく愛する人々が大勢います。彼らはイルカを友として人間並みに考えていますから、イルカが殺される場面を見ると、涙を流し、胸が潰れる思いをしています。あなたは、犬や猫が殺される場面を見ていられますか?それと同じ状況です。

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