日本政界の国粋主義的な発言、アメリカに警鐘を
マーチン・ファクラーフェブ(Martin Facklerfeb)報告
2014年2月19日付け、ニューヨークタイムズ紙から完訳
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安倍首相 |
東京発:安倍晋三内閣の内部から、数件の挑発的な国粋主義的な発言が公表された。その内容に、アメリカを批判する内容も含まれていたので、日本をアジア諸国との政情のクサビと考えていたオバマ内閣の信頼感に一抹の不安を与える材料となっている。
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オバマ大統領 |
在日アメリカ大使館は、今までのところ安倍内閣の経済復活や米軍駐留に協力的だったことで中国との国力バランスの均衡を保てると満足していたが、最近の国粋発言問題が日米関係の決裂の導火線となることをを恐れる見解が生じてきた。問題の『発言』とは、第二次大戦における日本の戦争行為を書き換えたいというもので、それによると、特に中国と南朝鮮など日本の隣国との関係に及び、戦時中の日本が右翼化し、愛国心を高揚させた時代を取り戻そう、という趣旨である。
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衛藤晟一 |
アメリカを直接批判した発言の一つには、安倍内閣の首相補佐官、衛藤晟一(えとう・せいいち)が、YouTubeビデオ上で公開し、安倍首相の靖国参拝に「失望した」オバマ大統領を批判し、「失望したのは我々の方だ」と発言し更に
、「アメリカは、同盟関係にある日本を、何で大事にしないのか」と付け加えた一件である。言うまでもないが、靖国神社には国のために戦死した霊と共に、戦犯も祀られていることで、大戦中日本軍から抑圧されていた南朝鮮や中国から怒りの声が上がっていた。
衛藤氏のビデオ上での発言で、日米外交上の支障になることを怖れた内閣代表は、同氏に問題のYouTubeを停止取り下げるよう勧告した。
日本政府内部の紛争が元で、ワシントン政府とアジアで最も近い同盟国日本の絆が切れるかも知れない危機状態は、安倍氏にとって、ヨーロッパにおける第一次大戦前夜の様相を示している。歴史や国境問題に関する論争は、日本と朝鮮を説得し、泰然と構えている中国との均衡を保たせるべく尽くした努力にも拘らず、反感を持たせる結果となり、問題を更に複雑にしている。
アメリカ政府の関係者たちは、安倍氏が、同じくアメリカにとって重要な同盟国である南朝鮮との親交を深める努力を怠っていることに焦燥している。それは、妥当な実践項目の内に、過去を振り返って日本帝国が犯した侵略行為を謝罪することが含まれている。また、アメリカ政府の関係者たちは、中国が日本人を「恥知らずの軍国主義者」と定義付けていることに安倍氏が対抗し、日本のアジアにおける地位を固めようとしていることに怖れを感じている。
政治評論家たちは、アメリカ大使館が、安倍氏の靖国参詣を公式に批判することを考慮するであろう、と推測している。
その方面では、日本政府官僚たちは、目下中国の統制下にある尖閣島問題の解決に、アメリカが日本を支持するという明確な姿勢を見せていないことに憤激しているようだ。彼らはまた、オバマ政権が沖縄の基地移転問題で、安倍氏が政治上困難な状況だったにも拘らず、ワシントン政府に都合のよい方向に進めた努力を高く評価してくれないことに不満を持っている。
日米関係のエキスパート、東京慶応大学の細谷雄一(ほそや・ゆういち)は、「安倍首相は、政策的に同盟国との関係を強化することに払った努力が感謝されていないことに焦りを感じています」と語る。
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百田尚樹 |
安倍閣僚内からの最も強烈な表明は、極保守的な小説家、百田尚樹(ひゃくた・なおき)から出た。百田氏は、安倍首相から指名され、NHK放送局の経営委員となった人物である。彼は公開の演説の中で、「戦後の東京裁判は、アメリカ軍の空襲で東京や広島、長崎の原爆投下で大量虐殺をしたことを隠蔽するために行われた」と表明した。アメリカ大使館はそれについて、「不合理な糾弾だ」と反応している。
百田氏の表明は、先月NHK経営委員に就任した数日後のことであった。上記の表明の他に、「日本軍だけが兵隊に慰安婦を斡旋したというのは不公平である。アメリカの軍隊でも同じことをしている。歴史家に言わせると、日本には特別な淫売宿を軍隊用に提供するという習慣があり、何十万人という外国の婦人を強制的にかき集めたことは、他の国で兵隊たちが占領地の淫売宿に通うという事情とは違う、というのはおかしい」との発言もし、ワシントン政府を呆れさせた。
日本政府のオバマ政権に対する不満は、安倍氏が首相に選ばれた直後、大統領との会見を計画した時、1ヵ月先まで待つよう言われた昨年から引き続いている。最近では、オバマ大統領が日本へ4月に訪問する際、たった一晩しか滞在できないと知り落胆した。
消息通によると、こうした不満が積もり上記の発言となって吹き出したのであろうと解釈している。
東京拓殖大学、国際関係のエキスパート、川上たかし教授は、「私の知る限り、以上の発言は日米関係が最も危険な状態になった事件の一つです。今、日本は孤立している感じで、中には、アメリカに頼らず日本は独り立ちすべき時がきたと考え始めている」と分析している。
評論家たちは、問題の発言をした人々は、どちらかと言えば二流の人物で、安倍内閣の閣僚ではない。だが、大多数の日本人は、戦後5万人のアメリカ軍が駐留して日本の安全を確保していることで、圧倒的にアメリカに好意を持っている、と指摘している。
評論家たちは同時に、日米双方ともに焦燥を感じているのは現実である、とも指摘する。アメリカでは安倍氏に対して一部では、前回首相だった時の重要課題、つまり太平洋憲章と、当時国の誇りの名の下で行われた戦時下の圧政を、控え目な規模で復活させるのではないかという不安を感じ、やや混乱した印象を受けている。
スタンフォード大学、ショーエンスタイン、アジア・太平洋調査センター(the Shorenstein Asia-Pacific Research Center at Stanford University)のダニエル・スナイダー副所長(Daniel C. Sneider)は、「思うに、靖国参詣がアメリカの安倍に対する態度の転換期だったようです。あの参詣は安倍が、戦後の日本に愛国心を復活させる意志を持っていたことをアメリカに再認識させました」と分析する。靖国参詣、それとアメリカ批判、これらが革新声明という現在の風潮を解き放してしまったようだ。
アメリカの政治評論家や閣僚たちは、安倍氏が自身やその閣僚を国粋的声明から充分な距離をおいておかなかった誤りに気付いていなかった。実際のところ、安倍内閣の代表者は、衛藤氏の「アメリカに失望」との失言に関してビデオの撤去を要請したにも拘らず、発言者を訓戒することなく、「個人的な考えだった」と断って済ませてしまった。
去る水曜日、東京で安倍首相に会見した訪日中のアメリカ国会議員たちは、改革声明や安倍氏の靖国訪問を警告したが、これはむしろ中国にとって有利だったようだ。議員たちは警告に添え、日米関係は基本的には安泰だからこうした失言問題は容易に修復できる、と結んだ。
上記議員の一人、ウイスコンシン州選出の共和党、ジム・センセンブレナー(Jim Sensenbrenner)代表議員は、「仲の良い友人の間でも、気まずい発言や誤った失言をすることもあるが、何とかうまくいくものだ。大切なのは、我々は経済的に活発で強力な日本が中国に対抗でき、均衡を保てる立場にあることだ」と楽観的だった。
「個人的な見解」で失言が許されるとは、日本の政治家は『二枚舌』公認ということか。『建前』と『本音』、信用できない。「武士に二言はない」と言って、実行できたら信頼してやろう。
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