2014年3月25日火曜日

動物すべてが陥る幻影

ローラと、ジェニファー・ケリー(Laura Kelley + Jennifer Kelley)の論文から抜粋
2014年3月23日




上図は、見方によって「右を向いているウサギ」「左を向いているアヒル」かに思える。こんな些細な『だまし絵』のような視覚上、幻影または錯覚を起こすことを考えると、人間の知覚が、その『認識』と『事実』との間に明らかな相違があることを思い知らされる。こうした幻覚の知識は、人間研究の上で限られていた。

その様子が最近変わってきた。人間以外の動物でも、同様な錯覚を起こすことがある、ということが判ってきたのである。そうした違った機能をもつ脳の反応を分析することで、視覚上の認識の進化を解明できるかも知れない。

上下を区切る5本の線は、完全に水平、同間隔の平行線である。
神経系統や心理学の専門家たちにとって、幻覚反応は視覚上の認識の仕方を分析したり、その心理的な再構成できるだけでなく、人間の知覚上の束縛を明るみに曝し出すことができた。そして人間が『何か』を見た時の知覚が、その大きさ、動き、色、彩度、明度、立体度、その他に影響され、何百通りもの違った反応を起こすのである。

古代ギリシャの遺跡、パルテノン神殿。円柱に注目。

美術家、建築家、デザイナーたちは、過去何世紀にもわたって、幻影を創作し、人間の知覚を歪めてきた。その一般的な技法は、『大きさ』、『長さ』、『距離』を錯覚させることが主流だった。一例が、古代ギリシャ建築の円柱は先細にすることで、地上から見上げると実際より高く見えたことである。こうした幻影は、『遠近法の意図的錯覚(forced perspective)』と呼ばれ、装飾的な庭園や舞台装置のデザインにも多く応用され、実際より大きく広く感じさせるよう計画された。


色彩の不変性(color constancy)』と言われる知覚は、色タイルの幻覚で証明できる。上図の六面体の上の面は光に照らされ明るく、左側面は影で暗い。上の面の真ん中にある★印しがついたタイルは茶色に見え、左側面の真ん中にある★印しがついたタイルはオレンジ色に見える。実際は、いずれも同じ色なのだが、見る人の脳が、『明暗』という知覚で無意識に色彩を調整し、違った色と錯覚するのである。

『大きさ』の錯覚は、人間を含む動物全ての本能であるようだ。

(めす)のカニは、ハサミの大きい雄(おす)に惹かれるようだ。それを心得ている雄は、自分のハサミより小さいハサミを持っているカニを左右に侍らせることによって自分のモノを大きく見せかけ、雌の関心を引き寄せる。

左の中央にある円と、右の中央にある円は同じ大きさである。
こうした幻影効果を『エビングハウス幻影(Ebbinghaus illusion上図)』と称し、それを心得た人間の男性は、自分より見劣りする男たちを周りに集めて自分を目立たせ、女性の関心を惹こうとする本能がある。

19世紀の心理学者、ジョナサン・パァキンジェ(Jonathan Purkinje)は、「感覚を欺くことは、知覚の真理である」と言った。


上のビデオは、『立体感』の錯覚幻影を種明かしして見せる。


過去50年の間、科学者たちは動物の感覚と、我々人間の感覚には、大きな相違があることを認識してきた。視覚上の幻影は、動物が環境に対応する知覚的な予測を判断するためには欠かせない機能である

1 件のコメント:

  1. こうした幻影、幻覚、錯覚、だまし絵、は数限りなくあります。古今の名画から、生活の周辺から、見付け出すのも一興。自分で創作しても愉しく、頭の運動にもなります。

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