2014年3月14日金曜日

外人が感じた日本名の妙

マーク・シュライバー(Mark Schreiber)
2014年2月28日付け、ジャパン・タイムズ紙から


幸運の車輪:トヨタ自動車製、長期ベストセラーだった1957年型コロナ

以前私が、国際的な大手ハイテク企業の広報部門に電話をかけた時は幸運だった。こちらから聞いたわけではなかったが、電話を受けた若い女性職員は、自発的に「私は青木と申します」と応答してくれた。彼女は名前を発音する時、「ア、オ、キ」と、シラブルを明瞭に分割してくれ、音楽的な響きがあった。

そのアオキさんは、多分目の前にいない私の日本語からガイジン訛りを聞き取ったのであろう、親切に丁寧にゆっくり発音してくれたに違いない。ということから、私はとっさに彼女が巧みな対話の経験者であると察知し、続く会話からそのことを確認した。彼女は丁重に、「お名前はなんとおっしゃいますか」と、予想できない答えを促した。というのは、一説によると、日本の名字(苗字)は30万種ほどあり、バラエティの富んでいるからである。

これは驚異的な数字である。中国は日本に比べて10倍の人口がありながら名字は5千6百種程度に止まるのみならず、その大半70%の名字は45種に過ぎない。

最近、名字の話題について週刊ポストの1月17日号に興味深い記事が発表されていた。その『名字の秘密』と題する16ページに及ぶ報告によると、『秘密』らしいことは殆ど無かったが、私の興味を惹いたのは、日本人の名字は8種の要素を起源としている、という概念であった。

第一は[地名]、例えば『山口』、『宮崎』の類い。第二は[地形や土地の様子]、例えば『山本』、『寺田』、『高橋』の類い。第三は[方位や方角]、例えば『西川』、『坂下』、『辰巳(たつみ)』、『巽(たつみ)』の類い。第四は[職業]、例えば『服部』の類い。第五は[藤の付く姓]、例えば『藤原』、『遠藤』、『伊藤』、『佐藤』の類い。第六は[封建時代の家系に縁のある姓]、例えば、『松平』、『浅野』、『島津』の類い。第七は[僧籍に関連した姓]、例えば『釈(しゃく)』、『即真(つくま)』、『無着(むちゃく)』の類い。そして第八は[その他]、と分類されていた。

週刊ポストでは、私が常日頃気になっていたことに触れていた。その一つは、なぜ自動車メーカーの名門『とよだ』一族が、社名を『トヨタ』に変更したかが疑問だった。主な理由として挙げられるのは、字画による判断だそうだ。そのロゴが英語だったら『Toyoda』と『Toyota』では同じ6文字だが、日本語では『トヨダ』が10画なのに対して『トヨタ』だと濁点がないので8画で済む。それに『8』という数字は繁栄を意味するので好ましい、とのことだ。

一方、日本で最も多い上位5種の名字、佐藤、鈴木、高橋、田中、渡辺、について余り論議されていないようだ。従って、国勢調査でも公式な名字ランキングは付けていない。最近一般的に普及している携帯電話、さらに個人の電話帳記載などに効果的な一括記載が考えられるが、採用されていない。

さらに問題を複雑化させているのは、同じ名字が同じではない事実である。一例が、―― 滝沢、滝澤、瀧沢、瀧澤 ―― の名字例である。いずれも『たきざわ』と発音するが、『』と『』、『』と『』が二種類ずつあるため、4種類の名字が発生してしまった。


また、例えば『小原』という名字は、『おはら』、『おばら』、『こはら』、『こばら』、など、個人によって発音が違うという不都合まで生じている。

1 件のコメント:

  1. そうですね。私の知人、上村さんは、「うえむら」と呼ばれると不快感を露骨に表わして「かみむらです」と訂正するか、機嫌の悪いときは返事もしませんでした。

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