2013年12月4日水曜日

ドン・シルヴァスタインのイラスト

無題(女性の肖像)
ドン』こと、ドナルド・シルヴァスタイン(Donald Silverstein)が亡くなってから早くも10年になります。年が明けて1月30日が10回忌の命日に当たります。生前、ドンの美術的な才能には、二つの面がありました。本質的にドンは抽象的な美を探求する画家でしたが、むしろイラストレーターとして知られていました。ドンは、奥さんのサキコさんの内助の功で絵を描き続けていましたが、死後は、これもサキコさんの努力で、彼の画家としての才能が広く認められるようになりました。

当初から、ドンの遺作集を『画家編』と『イラストレーター編』の2部に分けて発行する計画でした。過去10年近く、ドンの画家としての才能に焦点を当てていましたが、その成果が上がったところで、保留していた『イラストレーター編(下掲)が刊行される運びになりました。今回は、そのご紹介です。ドンの多角的な才能を全てご紹介すると、読者を混乱させることになりますので、折を見ながら、徐々にその才能に触れて戴くことにいたします。
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芝居っ気たっぷりのドンとファッション・モデル
ドナルド・シルヴァスタインは、1932年ペンシルベニア州の炭坑町で生まれた。子供の頃、毎年春には決まって起こる洪水で、警備隊に救出されるのが楽しかったという思い出がある。長じて一家はデトロイトへ移住し、ドンは美術専門の学校で学んだ。卒業後はアート・スタジオで働き、次第に技術を身に付けた。仕事に自信がつき懐が豊かになったドンは、ロンドンに渡り、出版社や広告代理店からイラストの仕事を受け、ポルシェを乗り回し、ロンドンっ子達と呑み歩き、遊び回っていた。

その後帰米、ニューヨークはグリニッチ・ビレッジのロフトにスタジオを構え、優雅な独身貴族を気取り、ボヘミアンの生活を満喫していた。その筋では売れっ子で、ロンドン当時と同じく出版社や広告代理店からイラストの仕事を引き受けていた。

1968年頃、勃然としてニューヨーク生活を罵り、アリゾナ州のサボテンの彼方に隠遁してしまった。これが奇妙な縁でサキコと結ばれたのである。

一旦ニューヨークへ戻ったものの、以後は転々と中近東を含めて世界各地を彷徨い、日本に10年程滞在し、最後はニューヨークへ戻り、健康を損ない、2004年に他界した。

ドンの才能は奔放にして繊細、乱脈にして緻密、その両極端が妖艶に混在しながら調和を保っている。天使と悪魔が融合した鬼才、と私は評価している。編集:高橋 経
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1 件のコメント:

  1. 「天使と悪魔が融合した鬼才」とは、ドンの人柄と作品を言い得て妙です。

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