2013年9月10日火曜日

日本版、携帯電話用社交アプの野望


エリック・ファナァ(Eric Pfanner)
2013年9月5日、NYT掲載の記事から抄訳
(写真版権は全てNYTが所有)

東京発:伝統的な日本の社交は、出会いに頭を下げてお辞儀をすることから始まる。握手をする習慣はない。だが今日では、何百万人の人々がスマートフォン(Smartphone: 日本の利用者は『スマホ』と呼んでいるようだ)を使って社交をしている。その仲介を務めているのは、二年前に発足したライン(Line)』という社交アプリケーションで、それを通じて情報や他愛のないスティッカーを送ったり、友人とゲームを楽しむことができる。今日その利用者はアジアで2億3千万人に及ぶ。この数字は、世界一を誇る『フェィスブック(facebook)』が5年かかって到達した普及率である。

しかし、ラインはまだアメリカには上陸していない。だから、この南朝鮮に本社があるNHNコーポレーションの子会社である『ライン』社の名は、殆どのアメリカ人は聞いたことがない。
ラインは、アジアや、ヨーロッパと南米の一部における何億人というスマートフォンの利用者にフェスブックツイッター(Twitter)が独占的に普及している市場に参入させようとしている。『ライン』は、日本での熱狂的な人気の波に乗って、利用者数をさらに拡大し、終局的にはアジアから生まれた最初で最大の世界的社交サイト網にまで成長させようという野望を持ち始めた。

ライン社製のゲーム・アプリケーションを説明する幹部のマスダ・ジュン
ライン社は、世界一の雑踏で有名な東京渋谷の大横断歩道を見下ろす高層ビルの27階に本社を置いている。その事務所で、モリカワ・アキラ社長(漢字不明)は、「ラインを万国共通語の媒体に変身させる計画です。すなわち、フェィスブックグーグル(Google)を凌いで、オンライン・サービスで世界一になることです」とその抱負を語った。今のところラインは、フェィスブックの膨大な利用者数に比べたらまだ足下にも及ばないが同社の急成長ぶりから考えると、その抱負は実現の可能性を秘めている。
(訳注:アップルのコンピューター、アイフォーン(iPhone)、アイパッド(iPad)には数年前から100カ国語余りの言語が内蔵され、使用者が必要な言語を選択して実用できる。)

現行のインターネットの巨大会社を相手にした場合、ラインの見逃せない利点は、発足当初からスマートフォンを対象として重点的に創作されている点である。言い換えると、従来のアプリケーションは、コンピューターが起点となっているので、スマートフォンで利用する場合は一段階余分なアプリケーションが必要であった。

フェイスブックを創始したマーク・ズッカバーグ会長(Mark Zuckerberg)は、それについて妹のランディ(Randi)に相談した。彼女は最近訪日し、東京で「カッコいい若者たちが、皆ラインを利用している」ことをつぶさに見聞してきたからだ。

会社員のスズキ・ノリコ(22才:漢字不明、左の写真)もその『カッコいい』娘の一人である。彼女は、ラインを利用し、日に約50通のメッセージを発信している。内容は業務用のリポートから、休暇の話題、昼食メニューの写真に至るまで雑多である。
通信には、しばしばデジタル『スティッカー(Sticker)上掲のスマートフォンを参照を添付する。それは、おどけた熊とか、醜いウサギとか、他愛のないマンガだが、それで言葉では言い表しにくい感情を伝えることができる。ノリコ嬢は、「その方が、腹立たしいとか、幸せがイッパイとか、泣きたいほど悲しい、といった感情が素直に出せるんです」と告白している。ラインは、そうしたスティッカーの数々を用意している。その他に、例えば『キティちゃん』のような人気キャラクターも利用されている。
ライン社の統計によると、そうしたスティッカーは日に10億回も利用されているという。こうした習癖はアメリカにも波及し、ボチボチ利用されるようになっているようだ。
「こうした戦略はバカにできません。トップに立つフェィスブックも油断せず、このような他愛のない戦略サービスを考え直したらいいと思います」と語るのは、電信コミュニケーション調査専門(Telecommunication Research Division)、オヴァム社(Ovum)の市場分析家ネハ・ダァリア(Neha Dharia)。社交サイトの急成長の結果、電信、電話など電信コミュニケーションの企業は、今年だけで320億ドルもの減収という憂き目にあっている。
スティッカーは、ライン社が立てた戦略のホンの一部でしかない。40種一組のスティッカーは僅か170円だが、これがライン社に月100億円の収入をもたらす。社交サイトは、更に広い分野を開拓し、映画演劇など芸能分野にまで広げる土台として普及することは必至である。
ゲームのソフトは、ライン社では最大の収入源で、月に250億円の売り上げがあり、同社の全収益の約半分を上回っている。ゲームは、ほんの一年前に始めたばかりだが、既成の『ライン・ポップ(Line Pop)』とか『ライン・バブル(Line Bubble)』などのアプリケーションは、グーグル・プレィ(Google Play)アップル社のアップ・ストア(App Store)などで売られ、アメリカの市場では上位10位内のベストセラーに登場している。
ライン社がアメリカ市場に食い込む上での隘路は、日本や朝鮮で受けているセンスがアメリカで通用するかどうかの可能性が未知であることだ。例えば、『絵文字(emojiとしてアメリカで通用)』が最近流行の兆しをみせているが、日本の若者たちが感じる『カワいい』イメージが、どこまで普及するかは疑問である。

携帯電話査定機関(Mobile Measurement Firm)オナヴォ(Onavo)社の報告によると、日本国内で使われているアイフォン(アップル製)の71パーセントが、アメリカでは1パーセントがラインを利用しているとのことだ。フェィスブックの12パーセントに比べると微々たるものだ。

ライン社の幹部たちはアメリカ市場へ参入するについて、競合する独占的なアプリケーションがないという理由で楽観的な観測をしている。その上で、市場開拓に当たって、(名前は明かせないが、、、)アメリカの人気スターを宣伝に起用すべく交渉中だということだ。
ジーニィ・ハン嬢(左)とモリカワ・アキラ社長
現にライン社では昨年、アメリカ上陸に先駆け、試験的にパラマウント映画の元幹部、ジィニー・ハン(Jeanie Han)嬢を代弁者として起用し、ヨーロッパと南米の市場開拓の宣伝を行った。ハン嬢は、スペインの実験市場の増進について指摘していた。オナヴォ社の調査によると、40パーセント以上のアイフォン使用者がラインを購入し組み込んだと報告している。ライン社はこれを踏み台とし、南米やヨーロッパ市場を席巻する構えだ。その手始めとして先週、バルセロナのサッカー選手一人一人の肖像を描いたスティッカーを発売する計画を発表した。
ハン嬢は、「スペインでの成功は幸先が良いですね。ラインが欧米文化に溶け込めるという前例を作ったわけです」と喜んでいた。
また、ライン社の幹部によると、インターネット利用者の間で最近問題になっているプライバシーの保護について対策を立てているそうだ。ライン社は加入者の姓名は問わず、仮名で登録させることにしている。また、従来のサイトのような『公開』を避け、社交は個人レベル内で行うようにしている、とのことだ。
モリカワ社長は、「利用者の皆さんに不安感を与えないことが我々のサービス精神で、有意義な体験を味わっていただきたいのです」と語った。

1 件のコメント:

  1. スマートフォンの普及は正に「燎原の火の如く」広がっています。一度手にしたら離せない、便利な器械ができたものです。

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