2013年8月10日土曜日

遠い遥かな追憶

高橋 経 (たかはし きょう)
2013年8月9日

先日、旧友のジム(James A. Lodge)からWe Remember(憶えている)』と題したビデオが添付(下掲)されたメールが届いた。アメリカ空軍の戦闘機、爆撃機、プロペラ機、ジェット機など、今昔新旧の軍用機の数々を織りなした軽快な映像転換に加え、所々で年老いた曽てのエース・パイロットが感慨無量の面持ちで旧爆撃機の機体に触れ追憶にふけるカットが挿入されている。いわばアメリカ人の愛国心をかき立てる映像の流れに、センチメンタルなバック音楽が効果的だ。

奇妙なことに、私はこのビデオを見ている内に胸が熱くなってきた。直後この無意識な反応について、私は何故か理解できなかったし深く考えてもみなかった。確かなことは、アメリカ人の愛国心を盛り上げるべく制作されたこの映像に、日本人である私が共鳴したわけではないという反撥心は自覚していた。

その感慨が不可解のまま2週間が過ぎた。先刻、溜まっていた新旧メールを整理しながら、ジムのメールに目が止まった。もう忘れかけていた添付のビデオを何気なく再生して観た。何と2週間前に観た時と同じ感動が蘇り胸が熱くなってきたのである。でも今回は、その理由が何であったかを電光のように悟った。その時、遠い遥かな追憶が、アメリカ空軍の飛翔シーンの向こう側から浮かび上がってきたからだ。

今から70年前、当時私は中学2年生、日米戦争が始まって2年目に入り、戦況は次第に日本側の不利となり、少年飛行兵の要求が高まってきた。『加藤ハヤブサ戦闘隊』や赤い血潮の『予科練』の映画や主題歌に熱狂し、大空に翔る夢を描いていた。つまり、その時代の追憶がアメリカ空軍飛翔の映像を観ている内、鮮やかに蘇ってきたのである。

日本の降伏で日米戦争が終わったのが1945年(昭和20年)8月15日、あれから68年、今や日米の関係は疾うに『敵味方』の観念ではなくなっている。このビデオを通じて私の願いはだだ一つ、これら颯爽として勇ましい戦闘機や爆撃機が『無用の長物』になる時代が一日でも早く訪れることを祈って止まない。



"We Remember" via YouTube: 6:20 min.

1 件のコメント:

  1. このブログを公開してから、三度目の観賞をしました。今度は胸が熱くなった上に目頭が潤んできました。悲しく、辛く、甘酸っぱい追憶です。

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