2013年12月30日月曜日

首相、靖国参詣の波紋



阿部晋三首相が靖国神社を参詣したことの波紋が、太平洋を伝わってさざ波が立った。と言っても、大方のアメリカ人はその一件には無関心そのものである。たとえ、その事実を聞いたとしても、「アメリカの大統領だって戦没者の墓地アーリングトンをお参りするよ。なぜ日本の首相が戦没者を祀ってある神社を参詣したことが大騒ぎになるんだ?」と訝るであろう。

私も同感である。しかし、しかしである。阿部首相が靖国神社を参詣するには、それなりの事前に解決しなければならない必須の下準備あったはずだ。阿部首相が怠った下準備とは:

第一に、さきの太平洋戦争で日本を破滅寸前まで引きずっていった日本の軍国指導者が、敗戦後、東京裁判で七名が死刑の判決を受けて処刑された。その靖国に合祀されている七柱を撤去しない限り、参詣の大義名分は立たないであろう。

第二に、『合祀』にからんで反撥している中国の指導者を納得させる努力が必要であろう。不幸にして戦後68年を通じて、歴代の指導者の一人として、『南京大虐殺』を含めた日本軍の暴行を認め、公式な謝罪をしたという話は聞いていない。

第三に、中国と同様、韓国の不満にも対処すべきであろう。戦時中、日本将兵の慰安婦として駆り出された韓国婦人に対して、満足させるような謝罪をし、納得がいく慰謝料を支払ったのであろうか?この2項目に関して阿部晋三は、戦後10年近く後(昭和29年)に生まれてきたのだから、「私には関係ない」と思っているかも知れないが、それでは日本を代表する首相は勤まるまい。あるいは、祖父の岸信介が戦犯だったから、合祀に賛成なのかも知れないが、この際個人的な感傷は捨てた方がよかろう。

もし阿部首相が以上3件を解決していたなら、正正堂々と靖国神社を参詣することに何ら反対する余地はない。にも拘らず、阿部首相はお忍びで参詣したのではなく、『公に』参詣していることである。なぜか?と勘ぐりたくなる。

さきに『特定秘密保護法』なる政府にとって都合のよい法律を、難なく通過させている。国民の疑念や反対意見を完全に無視した政府の独善政策を知った私は、かつて戦中の帝国主義時代に制定された『国家総動員法』とか『治安維持法』を連想し、身震いを禁じられない。

日本の憲法は、戦後アメリカ占領軍によって、「戦争を永久に放棄する平和国家」を謳った新日本憲法が生まれた。そのお蔭で、以来日本国民は、68年間全く戦争と無関係な平和国家を謳歌することができた。にも拘らず阿部晋三と自民党は、尖閣島を巡って強硬な態度を示している中国や核武装に熱中している北朝鮮と対抗するには、「戦争を放棄」する憲法は不都合だと考え始めているようだ。「力には力を以て」の思想は、一触即発の戦争への道に繋がる。


これらが、阿部晋三をして、中国および韓国を挑発すべく「公に」靖国神社を参詣したとなると事は穏やかではない。日本が自民党独裁で法律を勝手に操作でき、民主主義が有名無実なりつつあると考えるのは、私だけの杞憂であって欲しい。

1 件のコメント:

  1. 日本は民主国家になって68年も経っているが、未だに『階級制度』という観念から抜けられず、首相は「偉い人」で尊敬すべきだと信じている人達が大勢いるようだ。地位が高くても、間違いをしたら、誰でも批判したり非難することができるのに、、、。

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